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がんを知ったとき、
なんとも不思議な病気だなあ、と考えた。
腫瘍には「悪性」との診断がつくが、
告知の前も後も私自身が急に変わるわけではない。
部位が乳腺ということもあって、腫瘍が私の命をすぐに
おびやかすわけではない。限りなくこれまでどおり
普通に動ける。
いざ治療ともなれば、抗がん剤が効くか効かないか、
どんな副作用が出るか、そして治療終了後の経過も、
なにもかもが予測不能。仮に再発や転移があったとして、
共存の時間がどれぐらいでどんなものになるのかも
その人しだいだろう(ここは想像)。
病でありながら
ほぼ何も確定的なものがない、
私が現在ここに許されていること以外は。
『がん告知以後』では、「不確実性」と表現されていた
この不思議さ。
最近出会ったこの一節。
「ガンがミステリアスというのは、ミステリアスだから
手の打ちようがないという悲観的な意味ではなく、
何が起こるかわからないから希望を捨てないで
いいんだというポジティブな意味だと捉えてください。」
色々な意味で、きっかけと猶予を与える病だと思う。
自分に気づくきっかけと、日々に感謝する猶予を。
出展:帯津良一『ホリステッィク医学入門ーガン治療に残された無限の可能性』
(角川書店、2009年)
治療に通いながら
放射線科の書棚にあった『がん哲学』(樋野輿夫著)を
毎日こつこつ読んでいて、思いがけずみつけたことば。
がん研究第一人者の吉田富三曰く、
がん研究の目的は、
「人のからだに巣食ったがん細胞に介入して、
その人の死期を再び未確定の彼方に追いやり、
死を忘却させる方法を成就すること」
これこそ、私が直面している不安を言い表したことば
であり、かつ私自身が治療や日々の生活をとおして
成し遂げたいと思っていたこと。
まだまだ甘い経験とは思うけど、「がん」を知って、
死をこれまでとは違った形で意識したのは事実。
がんと出会った以上、
治療が終わった今も、これからも、やわらぎこそすれ、
不安はゼロにはならないような気はする。
けど自らが心と身体の主治医。
現在に集中すれば、生は圧倒的に存在感がある。
不安が少し遠のく。
直接的ではないのに、なぜかとてもしっくりきて、
同時に、今に集中すべしということを再確認できた
ことば。
樋野興夫「医師の目」にて引用(毎日新聞、2009年3月15日)
手術を目前に控え、31歳にして直面した出来事を
なんやかやとこぼす私に友人より:
「人の数だけ、たくさんのものさしがある。
でも君が今いるポイントは現在しかないんだよ」
世の中に思いがけないことや苦しいことがいったい
どれぐらいあることか。単純な比較のうえで生きるの
ではなくて、私が私の現在を生きること。
それは異なる生を今まさに生きている、あらゆる他者の
喜びと苦しみに思いをめぐらせるきっかけにもなる。
座右の書だった『自省録』、
病になって再びそのことばの中へ。
波の絶えず砕ける岩頭のごとくあれ。
岩は立っている、その周囲に水のうねりはしずかにやすらう。
「なんて私は運が悪いんだろう!こんな目にあうとは!」
否、その反対だ、むしろ「なんて私は運がいいのだろう。
なぜならばこんなことに出会っても、私はなお悲しみもせず、
現在におしつぶされもせず、未来を恐れてもいない」である。
なぜなら同じようなことは万人に起りうるが、それでもなお
悲しまずに誰でもいられるわけではない。それならなぜ
あのことが不運で、このことが幸運なのであろうか。
いずれにしても人間の本性の失敗でないものを人間の不幸と
君は呼ぶのか。そして君は人間の本性の意志に反することで
ないことを人間の本性の失敗であると思うのか。
いや、その意志というのは君も学んだはずだ。
君に起こったことが君の正しくあるのを妨げるだろうか。
またひろやかな心を持ち、自制心を持ち、賢く、考え深く、
率直であり、謙遜であり、自由であること、その他同様の
ことを妨げるか。これらの徳が備わると人間の本性は自己の
分を全うすることができるのだ。
今後なんなりと君を悲しみに誘うことがあったら、つぎの
信条をよりどころとするのを忘れるな。
曰く、
「これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは
幸運である。」
出典:マルクス・アウレーリウス (神谷美恵子訳) 『自省録』
(岩波書店、2008年) 69頁、改行:kuromachi
病を知って、さあこれからどう生活していくかというときに出会った
「ストレスを減らすための15の方法」。
とても基本的。
基本的だからこそなんだか逆に励まされたヒントたち。
1 十分に運動する
2 適切に栄養をとる
3 楽しいことをする
4 自分が心の中で自分に語りかけていることをみつめる
5 自分自身のことより周囲のことに関心をもつようにする
6 徹底的に話し合う
7 自分ができる問題解決法を見つける
8 自分の体力の限界をふまえて生活する
9 心身の負担になると思うことを「断れる」ようになる
10 時には「あきらめ」る
11 前向きの考え方に心を集中する
12 一度に二つのことをしない
13 今までどおりに何でも自分でできるという気持ちを変える
14 一日に一回は心の底から笑う
15 適切に睡眠をとる
(+心に不安があると感じるときは…)
寝室のドアの外に悩みを置いてくる
出展:” I Can Cope”、季羽倭文子『がん告知以後』(岩波書店、2006年)にて引用
「この出来事は長い人生の経験の一部」
といったうえで先生がおっしゃったことば
「 これからの期間は人生でみるたくさんの風景の中でも一瞬にすぎない
でも
その風景にあなたがとりこまれないように気をつけなければならない」
